【岡山市北区】「学びたい!」を叶える魔法の場所。『岡山自主夜間中学校』が提供する ”学び直し” の現場を見てきました。
北区表町のオランダ通り沿いに、「岡山自主夜間中学校」という、誰でも利用できる ”学び直しの場” があることをご存知でしたでしょうか。
2022年10月から2023年3月にかけて同校を訪ね、代表の城之内氏からお話を伺ってきました。
ここに来られる生徒さんは10代から80代までで、現在320人ほどの方が登録されています。
また、学習ボランティアと呼ばれる先生役のスタッフはおよそ280名の登録があります。
2017年4月に開校した当時は、しばらくの間利用者ゼロの状態が続いていましたが、今では全国に30ほどある同様の民間施設の中では最大規模にまでなりました。
◆義務教育の実態
2020年の国勢調査によると、
◎未就学者(学齢を経過した人の中で、小学校を修了していない人)が9万人以上。
◎最終学歴が小学校卒という人はおよそ80万人。
つまり、義務教育未修了者が現実に90万人近くいるということです。
この統計の中に形式卒業者(病気、不登校などで教育を受けないまま卒業証書を授与されたケース)は含まれていません。
したがって、実質的な義務教育未修了者の数はもっと多いそうです。
岡山自主夜間中学校にやってこられる生徒さんは様々な状況下で最低限の教育を受ける機会を失ってきた方々。
戦中戦後の混乱や貧困、そして最近ではいじめや学校になじめない不登校というケースが多いようです。
◆自主夜間中学とは
民間のボランティアなどによって運営されている学び直しの場を提供している任意の団体で、現在国内に30施設ほどあります。
いわゆる ”学校” としての認可を受けていないので、卒業資格を得ることはできませんが、外国人の方や義務教育を修了している方にも広く門戸が開かれています。
◆岡山自主夜間中学校を開設した城之内氏
城之内氏ご自身は現役の中学校の教師でもいらっしゃいます。
不登校だったかつての教え子から、「漢字が分からず履歴書が書けない」と悩みを打ち明けられたことがきっかけとなり、”誰でも利用できる学び直しの場” が必要であると考えました。
そして、”誰一人置き去りにしない” 教育を掲げる「岡山自主夜間中学校」が開設されることになりました。
学び直しをしたいと思っている方は多く、同校の存在が認知されるに従い生徒数も増え続け、ボランティア頼みの自主運営も難しくなりつつあるといいます。
実は岡山市にも2025年4月に公立夜間中学が開校することがすでに決まっていて、城之内氏もその設置検討委員会の一員。
これまでの実績を踏まえた提言もされているようです。
公立夜間中学校と自主夜間中学が、”双方を補完しあう関係性” を築くことが重要と城之内氏は言います。
◆学ぶことは生きること
教育には ”教養を身につける” 以上の切実な問題があります。
最低限の学びの機会さえなくしてしまうと、日常生活に支障をきたすこともしばしば。
城之内氏から伺った事例を一部ですがご紹介します。
◎通院の際には手を包帯でぐるぐる巻き
ある生徒さんはかつて病院に行く際に自分の手を包帯でぐるぐる巻きにしていたそうです。
問診の書類の読み書きができないことを恥ずかしく思い、手の怪我を口実にして口頭でやり取りをしてきました。
◎りんご1/2はりんご半分のこと!
小学校で習う「分数」が理解できていなかった方が学び直しの場で理解できるように。
この方は料理レシピに出てくる「小さじ1/2」などの意味が分からず、勘で調味料を加えていたといいます。
「りんご1/2」がりんご半分のことだと理解したときには、とてもうれしそうな表情を浮かべていたということです。
◎死んでも死にきれない
貧困な家庭で育った70歳代のある方はそろばんを買ってもらえず、そろばんの授業がある日はいつも学校を休んでいました。
その当時の悔しさを、そろばんが不要となった現在でも忘れることができず、「そろばんができないままでは死んでも死にきれない」とまで思い続けてきたそうです。
念願かなってそろばんをマスターし、現在は漢字や英語の習得に励んでいらっしゃいます。
◆岡山自主夜間中学校の授業風景
授業があるのは毎週月・水・土曜日の3日間。
◎月・水
1時間目:18:30~19:15
2時間目:19:20~20:05
3時間目:20:10~20:55
◎土曜日
1時間目:17:30~18:15
2時間目:18:25~19:10
ホームルーム:19:10~19:30
3時間目:19:30~20:15
↑授業を受けに来られた生徒さんは、まずこちらで受付を済ませます。
↑受付の隣には広い教室があります。
通常の学校の場合、教壇に先生が立ちそれを多くの生徒が聴くというスタイルですが、ここの教室は一味違います。
岡山自主夜間中学校の授業風景。
教室の中は生徒と先生の数がほぼ同じ。基本的にマンツーマン形式。
どちらが生徒で先生か一見しただけでは分かりません。
若い方がご年配の方から教わるケースもあれば、逆にご年配の方が若い方から教わるケースも。
しかも授業は国語・算数・英語といったメジャーな科目にとどまらず…
↑家庭科
↑音楽の授業
↑図工を楽しむ生徒さん。
↑歴史の授業
↑こちらでは、輪読をしています。
↑希望者を募って、道徳の授業も行われていました。
授業風景を見ていて印象的だったのは、授業と授業の間に数分の休憩時間を設けていますが、そのまま学びを続けている人の多いこと。
和やかな雰囲気ではありますが、皆さん真剣そのもの。
岡山自主夜間中学校は、それぞれの生徒さんの「学びたい」という想いを叶える魔法の場所のようでした。
◎今回は北区表町の「岡山自主夜間中学校」をご紹介いたしました。
同校で学びたい、あるいはボランティアスタッフになりたいという方がいらっしゃいましたら、お問い合わせフォームからも随時受け付けています。
また、同校では生徒さんから授業料の徴収はしておらず、皆様からのご支援もこちらで受け付けております。
岡山自主夜間中学校の場所はこちら↓